私は、欧米の薬学生の80%が「保険薬剤師」に魅力を感じている国際的な流れとは乖離した今の日本の現状を是が非でも改めてみたいと考える一人の保険薬剤師です。
国が違うとはいえ日本の薬局薬剤師には、未だに古くからの「足かせ」や「十字架」を背負わせ、身動きを取らせにくくするかのような「古い慣習」がいくつか残っています。
私が薬剤師になりたての頃、直接医師から言われたこともあります。
「カルテも見れずに何ができる?」「病名も知らずに投薬して平気なんか?」です。
現在では薬剤師たちの努力で、また薬学部が6年制になり、コミュニケーションの授業に力を入れたので直接患者さんから「聞き取る能力が上がった」とは思いますが、まだ完全ではありません。(そのためのマインナンバー資格確認、電子処方箋導入で大きなメリットがあると言うことに薬剤師自身が気付けていないこと)
次に「6年も薬学部で学んだ」としても「処方薬の変更」は薬剤学、製剤学、薬物動態など学んだこともない医師に「粉砕」「一包化」していいかの確認を求めなければならないこと。また10mg「0.5錠」などの指示を5mg「1錠」で調剤していいか? なども「わざわざ」医師に確認しなければなりません。
薬の専門家とは何だろう? 名ばかりであるのです。国は6年も薬学部で学ばせておいて、結局「薬剤師を信用しない」のであれば「何かがおかしい!」のは明らかです。薬剤師に責任を持たせることで医師のワークシェアリングにもつながるはずです。
また中身の薄い「セルフメディケーション」の議論が残っています。例えば「吐き気どめ」を市販できないことです。医療用医薬品の「ドンペリドン」が「嘔吐時に」処方されます。この薬剤は発売から30年以上経過する「非処方箋薬」に該当するにも関わらず「市販」は許されていないのです。それではOTCでは何を売っているのでしょうか? 漢方薬や胃腸薬と「酔い止め」になります。それを大いに揶揄されるわけです。
「だから薬局ではなく、患者さんを病院(診察)に来させなさい」ということになります。(イコサペントの条件付き市販も)
「緊急避妊薬の市販」も認めずに先進国からの周回遅れも甚だしいこと、それが女性の権利を軽視していることになっていないと感じている国であることも事実です。
薬学部の学生さんたちに認識を新たにしてほしいのは「薬剤師にとってのすごくいい時代はこの10年で過ぎ去ってしまった」こと、そしてそれを如実に感じてほしい。
例えばアメリカでは人口3億人に対して薬剤師が31万人しかいない。それに対して日本の薬剤師は34万人もいること。同じく薬局が6万1000軒になっていることが今後どうなろうとしているのか?
私が切に願うことは1日も早く「卒後有資格研修」の導入が義務付けられること。薬学部で「ワクチン接種」のトレーニングが始まること。
「対人業務」へ特化するために「足かせ」となっている「1日40枚調剤規制」を早期に取っ払うこと、これを国に求めたい。
薬学部が6年制になって「薬剤師を薬局という現場で育成する」ことは、今まで以上に重要性を増しています。
医療機関を持たない薬学部や、研修制度を未だ持たない新卒薬剤師は、就職してからの実践教育(4年制とは違う)を現場で実施しなければならないと強く感じるからです。6年も薬学部で学んで、今だに「Pharm. D.」を名乗れない薬剤師の国家資格であれば、それは大問題だと思います。
そのため弊社では、地域医療から考えてきた教育に、複数の大学の教育現場への参加から、学び感じたこと、そして「どのような育成が正しいのか?」「役立つのか?」など、率直なご意見を各大学教官からいただきながら、それをプラスし、より洗練された育成法を常に、模索、実践しています。
何よりも自社の社員だけで考えた独自色の強い「社員育成法」とは全く異なるものにしなければならないと同時に、常に変化する時代、現状に柔軟にマッチさせた「臨床教育」こそが、常に進化するマルゼン薬局の育成システムなのですから。
欧米の薬学教育システムに早く追いつき、保険薬剤師として、国民や医療従事者らの期待に十分応え、期待される本来の薬剤師を育成することが、私たちマルゼン薬局の役割であり、存在理由だと考えています。
そして、これからの「保険薬剤師」の仕事には、ビジネスとしての側面も当然ですが、みんなで地域医療に取り組み、貢献することから日本を変えていくチャレンジという大きな大きなチャンスがあるということを最後に強調してお伝えしておきたいと思います。